北は蓼科山、南は編笠山。これらの山をすべてつなぐ縦走を八ヶ岳全山縦走といいます。おおむね3泊4日程度が推奨されていますが、数年前に編笠山~赤岳や、赤岳~麦草峠を歩いた経験から2泊3日あれば十分なように感じます。そう考えていたときに、パリオリンピック編成で金曜日のローカルニュースが休止になったため運よく3連休が転がり込んできました。またとない絶好の機会です。ところが8月7日に南海トラフ臨時情報が発表されて夜遅くまで職場に残っていました。そのため蓼科山~北横岳までの区間を歩くことをあきらめて、北八ヶ岳ロープウェイで北横岳にアクセスしました。
2024年8月9日~11日に歩いたルートは以下の通りです。
泊まった山小屋は北横岳ヒュッテ(夕飯付き9500円)、本沢温泉(朝夕二食付き10000円)。いずれの山小屋も全山縦走を試みるうえで非常に都合のいい立地です。しかも良いことに両小屋とも冬季営業があるため冬の縦走でも利用できそうです。
A.北八ヶ岳ロープウェイ
北八ヶ岳ロープウェイは初めて訪れました。木組み風の建物はもちろん、係員の制服がスイスアルプス風でかわいくて真似をしたいと思いました。
B.坪庭
ロープウェイ山上駅の周囲は有名な坪庭で観光客が非常に多いです。北横岳から噴出した溶岩台地(八丁平溶岩)です。気象庁によると噴出は800年前とかなり新しいものの可能性があるようです。ロープウェイ山上駅から北横岳ヒュッテは40分ほどと非常に近いため、先に北横岳・大岳を目指します。
C.北横岳山頂
北横岳には南峰と北峰があり、ロープウェイ側に近い南峰からは南八ヶ岳方面を一望できます。山頂から火口の地形はわかりづらいですが、南峰と北峰の間が細い特徴的な地形で、火口の縁に当たります。
D.大岳山頂
大岳への道のりには物置大の大岩がゴロゴロと転がっていて、やや歩きにくく感じました。大岳も北横岳から噴出した溶岩流の中にあるピークで、溶岩が積み重なっています。訪れる人が少ないのか、八ヶ岳の山にしては山名盤が朽ちかけていました。大岳のピークからは、今回登頂をあきらめた蓼科山がよく見えます。大岳から蓼科山へ向かうルートは地図によると悪路なのだそうです。
E.北横岳ヒュッテ
ピストンで戻ってくると午後2時。ちょうどいい頃合いです。北横岳ヒュッテはたびたび登山雑誌で見ていたので人気で込み合っているかと思いましたが、この日は金曜日ということもあって宿泊は自分も含めて3組だけでした。大部屋の布団がふかふかで非常に快適です。夕食は桜鍋。山小屋でこんなに豪華なご飯が食べられるとは。
今年は八ヶ岳開山祭70周年でスタンプラリーが行われていました。八ヶ岳の山小屋に1回泊まるたびにスタンプが押され、スタンプ3個で高価な山道具に応募できます。今回の縦走でスタンプが2個たまるので、秋までにもう1泊して応募しようと考えています。
F.北横岳ビューポイント
翌朝は4時半に起きてきて、前日のうちに見つけていた北横岳と大岳の間にあるビュースポットに陣取りました。ここは七ツ池、北横岳ヒュッテ、南八ヶ岳方面が一度に見渡せます。小海方面に積雲があって日の出こそ望めませんでしたが、八ヶ岳は雲のほとんどない快晴で素晴らしい朝を迎えることができました。麓は一面の雲海です。北アルプスは穂高~白馬まで雲ひとつかかっていません。台風が来ているときは北アルプスは晴れることが多いのです。
G.縞枯ヒュッテ
北横岳から南に下る縦走路は三つ岳、雨池山と、完全に稜線をつないでいくものですが、一度坪庭におりて縞枯ヒュッテの前を通っても合流できます。この縞枯ヒュッテ周辺の朝露に濡れた草原はとてもきれいでした。北八ヶ岳は道が整備されているので非常に歩きやすく、コースタイムの半分しかかかりません。
H.縞枯山山頂
縞枯山、茶臼山と北八ヶ岳の小ぶりな火山のピークをつないでいきます。いずれのピークにも展望台が設けられていて、このエリアは小さなピークを登るだけでも満足度が高そうです。
茶臼山の展望台あたりでもう雲が稜線まで上がってきてしまいました。きょうは曇るのが早いようです。縞枯山はその名の通り縞枯現象が有名です。近隣の茶臼山や中山でも筋状に木が枯れている様子を観察できます。
I.麦草峠
麦草峠まで来た頃にはすっかり曇ってしまいました。水を補給したかったのですが麦草ヒュッテは営業時間前だったので、白駒池周辺に足を延ばして青苔壮で補給しました。
J.白駒池・高見石ヒュッテ
白駒池から高見石までの登りはとても滑りやすく、縦走路のなかでも悪路です。やや息切れしながら高見石の展望台に登ると再び晴れてきました。足元に白駒池が見えています。このあたりにはオシャレなことで有名な山小屋がたくさんあります。こんな都会風な山歩きができるのは八ヶ岳と北アルプスくらいです。チーズケーキを楽しみにしつつ白駒池から高見石小屋に登ってみると、なんと営業開始が1時間も先でした。小物はもう買えるというので記念のバッジだけ買わせてもらって、先に進むことにします。
中山からにゅうへの分岐にある案内板。数年前に見たときは古くて味があったのですが、新しくなっていました。たおやかな北八ヶ岳にあってこのあたりの稜線は東側が切り立っており、崩落が進んでいます。八ヶ岳大月川岩屑なだれに相当する部分で、平安時代の大地震で崩落しました。にゅうは地盤がかろうじて踏みとどまっている部分に当たります。遠くない将来、次の大地震で崩落する可能性があります。
K.黒百合ヒュッテ
黒百合ヒュッテは中山峠から徒歩5分。先進的でおしゃれな山小屋として高い人気があります。お昼前だったので昼食を注文している人が大勢いました。バニラアイスを食べました。いつか泊まってみたいものです。
L.天狗岳山頂
黒百合ヒュッテから天狗の箱庭を通って天狗岳に登頂。晴れていれば、天狗岳から稲子岳やにゅうの地滑り地形がよく観察できるはずですが、今回はガスで視界がありませんでした。天狗岳の東面もかつての大崩落で切れ落ちています。
M.本沢温泉
白砂新道を使って本沢温泉に下ります。白砂新道の名の通り、稜線近くは土壌が白く見えます。傾斜は急で、冬は閉鎖されてしまいます。一方、本沢温泉から夏沢峠に登る道はかなり整備が行き届いていて林道のようです。八ヶ岳エリアの中でも最も登りやすい登山道だと思います。
本沢温泉は期待通り素晴らしい山小屋でした。温泉は有名な露天風呂と内湯があって泉質が異なります。前回通過時は露天風呂に入ったので、今回は疲れをいやすために内湯のみ入りました。露店風呂は硫黄臭が強いのに対し、内湯は鉄の匂いを感じました。早く着いたので一番風呂。湯舟にかけてある木のふたを外すと、黄色い湯の華がたくさん浮いていました。
N.硫黄岳山頂
翌朝は午前3時に起きて朝風呂に入ったあと、硫黄岳山頂でご来光を見るために早出しました。出発時は星が見えていたはずが、硫黄岳につくころにはすっかりガスに包まれてしまいました。硫黄岳の山頂は非常に広く濃霧時は方向感覚を失いやすいため、至る所にケルンが配置されています。ケルンのありがたさがよくわかる天気です。
O.硫黄岳山荘
硫黄岳から硫黄岳山荘周辺はコマクサの群生地となっています。硫黄岳山荘の隣には駒草神社もあります。初夏がピークの花ですからもうしおれてしまったものも多かったのですが、朝露に濡れたキレイなコマクサを見つけることができました。ちょうど硫黄岳山荘の前を通りがかったとき小屋の人が天気を確認しに出てきて「視界なし!」とつぶやいて戻っていきました。
P.横岳山頂
横岳に登頂したころ雲から抜け出して晴れてきました。諏訪方面から西風に乗って流れてきた低い雲が稜線を洗っていきます。みるみる雲が低くなって快晴になりました。横岳から赤岳にかけての稜線は何度も歩いていますが、毎回違った感動があります。
Q.赤岳山頂
3カ月ぶりに赤岳に登頂。出発地点の北横岳が非常に遠く感じます。