関東甲信の梅雨が明けました。梅雨明け翌日の週末は白根三山を縦走することにして家を飛び出しました。大門沢ルートは南アルプスでも屈指の距離と標高差を誇るハードコースです。体力不足と所持金不足、さらに稜線上の強風が決定打となって白根三山の縦走をあきらめ、未踏だった広河内岳のピストンに計画変更となりました。2024年7月20日~21日に歩いたルートは以下の通りです。

大門沢小屋は1泊2食で11000円。白根三山エリアの山小屋は北岳周辺に集中しているため、南部の大門沢小屋は貴重な中継地点です。トイレは衝撃的です(農鳥小屋と似ています)。撮れ高は思ったより十分高く、奈良田の名湯めぐりができたのでこれはこれでよかったと思います。

A.女帝の湯

甲府駅午前6時20分発の特急ふじかわに乗ると、下部温泉と奈良田を結ぶ路線バスの始発便に間に合います。この路線は通年営業で、いつか冬の南アルプス登山に使いたいと考えています。

今回、初日の目的地は大門沢小屋で、奈良田からのコースタイムは4時間しかかからないので時間的にずいぶん余裕があります。そこで温泉に入ってから登り始めることにしました。奈良田には2か所日帰りの入浴施設がありますが、そのうち高台にある女帝の湯は午前9時にオープンします。女帝の湯というのは奈良時代に孝謙天皇が湯治を行ったと伝わるため。

B.白根館

下山後は白根館の日帰り温泉に入りました。アルカリ性のお湯で、長湯に適したぬるさと、とろとろとした柔らかい湯ざわりが特徴ですが、日によって白っぽかったり緑色だったり泉質が微妙に異なるようです。この日は硫黄臭が強く、前回入ったときとはまた違った泉質だったように感じます。

C.ゲート

奈良田から30分車道を歩くと大門沢へ入るゲートがあります。ゲートから途中の発電施設までは車道が整備されているため比較的楽に歩けます。

発電所の取水口です。ここで分かれた水は大門沢と早川の合流点まで運ばれて発電に使用されます。

ここから先はいくつもの橋を渡ることになります。この橋渡がこのコースの醍醐味といってもいいでしょう。1つ目と2つ目の橋は人が歩いたくらいでは揺れないしっかりした造りですが、3つ目の発電所の取水口にある細いつり橋からだんだん雲行きが怪しくなってきて、その後の橋はすべて木製の手作りです。木製の橋は冬もかかっているのでしょうか?

D.大門沢小屋

大門沢小屋には山小屋の軽食では珍しいそうめんがあります。南アルプスの天然水で湯がいた名物だそうです。1.5人前くらいのボリュームがあります。汗をかいた身体にめんつゆが美味でした。

宿泊客としては最初の到着だったので誰もいない宿泊棟の中を少し探検してみると、小屋のスケッチや古い張り紙などを見つけました。大門沢の谷中は湿度が高いため布団や毛布はやや湿っています。比較的乾いているシュラフを敷いて寝床を整えました。食事は17時から1回のみ。ごはんと味噌汁はお代わり自由です。半数以上が韓国のツアー客で、白根三山を縦走して下山してきたところのようでした。登りというより、下りで使う人が多いようです。小屋周辺は電波がほとんど届きません。

E.コル

南アルプスでは標高2500mでも鬱蒼とした森が続いていますが、地図でコルと書かれているあたりからハイマツが増えて、いよいよ高山帯の雰囲気になっていきます。わずかな平地があって冬のテント適地になりそうですが冬はコルは経由しないことが多いようです。

コルに落ちていた看板を見ると、現在のルートのほかに廃道となった旧道があるようです。冬はこの旧道を通るのでしょうか。コルより上にある小ピークに目印の標識が立っています。ハイマツ帯ではホシガラスが飛び交っていました。

F.大門沢下降点

大門沢小屋から2時間30分で稜線に到達しました。稜線にでてみると強い西風が吹いていて驚きます。これまでの暑さが嘘のように冷たい風が吹いています。鐘の周辺は年間を通して風が強く、冬でも雪がほとんど積もりません。

G.広河内岳稜線

広河内岳へ向かう途中、振り返ると農鳥岳がよく見えます。南アルプスは稜線が広めのどっしりした山が多いのですが、広河内~農鳥の稜線は複雑です。地滑りなどの結果なのでしょうか?大門沢コースは大変きつくて修行のようでしたが、この稜線が見られたので報われた感じがします。

この日は強風のおかげで地形性の雲が現れています。塩見岳には笠雲がかかり、荒川岳の方角には吊るし雲が並んでいます。これらの雲が見られたのは一瞬です。10分もすると雲の密度が上がって山が隠れてしまいました。

H.広河内岳山頂

広河内岳は初登頂です。山名盤のローマ字によって「ひろごーち」と濁るのが正しい読みであることを知りました。

南に延びる白根南嶺には複数の登山者が入っています。山と高原地図では破線コースですが、比較的よく歩かれているようです。今から考えると、大門沢コースを下るのと笹山まで行って笹山ダイレクト尾根を下るのはそこまで時間に差がないかもしれません。

ゲートには午前11時着。大門沢下降点から3時間でした。思ったよりもかかりません。1時間30分という一見不可能に感じる記録もトレランのペースなら可能なのかもしれません。

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