韮崎アメダスは韮崎駅から釜無川を渡った先にあり、韮崎市街からは若干離れています。韮崎アメダスの西側は数メートルの高さがある崖になっており、釜無川の河岸段丘だと思われます。訪問時はちょうど用水路の工事が行われており、周囲の様子がよくわかる航空写真が掲示されていました。木が生い茂る河岸段丘面の左右に高さの違う田んぼが広がっています。韮崎アメダスは下の田んぼの一角にある駐車場にあります。河岸段丘を登ってさらに西に行くと甘利山など南アルプス前衛の高い山がそびえています。
韮崎は寒候期の八ヶ岳おろしがたいへん強い街ですが、アメダスがある地点は崖がせまっているため市内より風速が弱い傾向があるかもしれません。地元の方によると韮崎市街から双葉滑空場があるあたりがもっとも風が強く、家屋が揺れるほどだそうです。双葉滑空場の滑走路は八ヶ岳おろしを向かい風として利用できるように南東-北西の走行に建造されています。
韮崎アメダスは甲府と比べて約70m標高が高いだけですが、ずいぶん気温が低いようです。駐車場内という一般的に気温が高くなりやすい観測条件にもかかわらず、です。これは昼間は釜無川を吹き抜ける風で気温が上がりにくいこと、夜間は甘利山など高い山から冷たい山風が吹き降りてくることが考えられます。
韮崎の地名は、八ヶ岳の山体崩壊で生じた韮崎岩屑なだれの堆積物が塩川(須玉川)と釜無川によって浸食されて残った部分が韮の葉の先に似ていたことに由来します。この浸食され残った部分は七里岩と呼ばれていて、JR中央線は七里岩の傾斜を使って富士見高原まで登っていきます。武田家最後の城である新府城も七里岩の地形を天然の城壁として完成間近でした。韮崎アメダスは七里岩の対岸にあり、周辺は釜無川の河岸段丘が発達しています。また西の高い山々には複数の地滑り地形を確認することができます。このような地滑りによってもたらされた大量の土砂を釜無川が削ることで段丘が発達していったのではないかと思います。ダイナミックな地形の変化を繰り返してきた地域です。