大月アメダスは都留高校の校門内にあるため訪れる際は気を付ける必要があります。観測機器は校門脇の植え込みの中に埋もれており見つけづらいですが、風車のない超音波式の風向風速計が目印となっています。この風向風速計は2021年に湿度計が新設されたときに風車式から更新されたもので、山梨県内では2023年現在大月と南部のみで見ることができます。頭上で測る風は別として、気温や降水量の観測環境としては植え込みの中にあるため問題があるのではないかと思います。
大月アメダスの設置場所は桂川と笹子川の合流地点にあたり、風の流れがたいへん複雑です。どの方角から風が届くかによって気温もずいぶん大きく変動します。例えば盛夏の正午前後には甲府や勝沼をおさえて国内上位の気温となっていることが珍しくありませんが、昼過ぎになると相模川をさかのぼる海風が届いて、すぐに気温が下がっていくパターンがよく現れます。最終的には県内3番手となることが多い印象です。ただし2023年は相模川の海風が昼過ぎになっても到達せず、大月がそのまま県内1位の最高気温となることが増えました。温暖化の影響を受けやすい地域なのかもしれません。
大月市街の平坦地は河岸段丘の段丘面に広がっていて、大月アメダスもその中にあります。この地域の地質は伊豆半島衝突のためにたいへん複雑です。関東山地を作っている古い付加体と、フィリピン海プレートの衝突に伴って出現した丹沢山地を作る新しい付加体が入り乱れています。衝突時、関東山地と丹沢山地の間にあった堆積物などが隆起し、砂岩の岩殿山ができました。さらにその後、古富士の溶岩流が桂川沿いに猿橋付近まで流下し、新しい溶岩が谷を埋めたことで川幅が狭くなり、谷を深くする浸食作用が強まって、大月~猿橋の渓谷は大変深くなりました。