勝沼といえば一面のブドウ畑をイメージしますが、この勝沼アメダスはどちらかというと住宅街のど真ん中、勝沼中央公園の敷地内にあります。真夏はたいへん気温が高くなることが有名で、40.5℃を観測したことがあります。甲府より標高が120mも高いのですが、近年は甲府より高い最高気温を観測することが増えてきました。勝沼が暑くなるのは盆地の奥部にあるため涼しい海風が到達しにくいこと、周囲を高い山に囲まれておりフェーン現象の影響を受けやすいことなどが考えられます。ただし実際に訪れてみると観測環境にも気温が高くなりやすい特徴があるように感じました。アメダスのすぐ脇は舗装された園内の歩道で輻射熱の影響を受けそうです。またその歩道を挟んで広いグラウンドと隣接しています。炎天下ではグラウンド全体で熱を持ちやすいのではないかと思います。

勝沼アメダスから南東を遠望すると山地が一段低くなっていました。笹子峠の方角です。笹子からは夕方になると比較的冷涼な風が吹いてきて、勝沼アメダスの気温が数℃~5℃程度も急降下する傾向があります。笹子おろしといい、ブドウ農家にとってブドウの高温障害を防ぐ大変重要な風なのだそうです。笹子おろしは富士川をさかのぼる南西風と収束し、峡東地域に夕立をもたらす効果もあります。

勝沼アメダスのすぐそばを旧甲州街道が通っています。甲州街道を上っていくと、甲府盆地の東端に日本ブドウの発祥地として知られる大善寺があります。伝説では行基がブドウを広めたとあります。扇状地にブドウ畑を作ることで標高の違いによる微妙な温度変化を利用し、ブドウの品種や時期をコントロールしているそうです。なお。JR中央線が日川沿いにまっすぐ甲府に向かわず大きく北に迂回して塩山駅を経由したのは「鉄道王」雨宮敬次郎の我田引鉄ではなく、当時の技術的な制約で傾斜が緩やかな地域を通る必要があったためです。

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